転職のきっかけ(6)

その日から、ますます色々なことを考える様になりました。
ひとつ変わったのは、これまであった漠然としたものが、ひとつの塊の様に見えてきたこと。
今日、発達障害を持つお子さんのママさんと話している時、私は仕事の悩みなんて忘れていました。
ただ、目の前にいるママさんのお話をしっかり聞きたいって思ったし、話を聞きながら「もっともっと色々なことをしてあげたい」と思いました。
「こういう悩みを持っている人に、私ができることってなんだろう」と真剣に考えました。

どういう言葉を使えば良いか解らないけれど、あのママさんの話を聞いて、「私はこういうことがしたかったんだな」ということをしっかり胸に刻むことができました。
きちんと時間をとって、患者さんやその家族のお話を聞いてあげること。
その方が受け止めている苦しみを、受け止めること。
そして、その方の悩みが良い方向に導かれる様に、お手伝いをすること。
そう・・・一人ひとりにきちんと向かい合うことができる仕事がしたかったのです。

今の病院が悪い、と言うのではないです。
やっぱり、あれだけ多くの患者さんを診る為には、今のやり方になってしまうと思います。
それに、「できるだけ多くの患者さんを診る」と言う病院は、やっぱり必要だと私は思う。
それだけたくさんの患者さんを診ることができる、と言うことですから。
それに、患者さんの中には「話はいいから、とにかく早く診察をしてほしい」と言う人だっています。
そういう人にとっては、私が今働いている病院の様なところの方が良いでしょう。

でも、私は今日みたいなやりとりができるところで働きたい…!
そう、強く思いました。
今日みたいなやりとりをしながら、しっかりと仕事をしていきたいと。
今まで悩んでいたものの答えが、はっきりと形になって見えた様な気がしました。

そうは言っても、すぐに転職を決意することができた訳ではありません。
その時の職場が自分に向いていない事は良くわかったけれど、だからと言ってどうしたらいいのか…と悩み始めてしまいました。
看護師の転職って、そんなにたくさんの数があるとは思っていませんでしたし、今病院を辞めたとして、きちんと看護師として転職できる保証はどこにもありませんでしたから。

なんだかんだ言って、その時の職場はお給料も良かったし、仕事のスピードが自分に合わないだけで人間関係が嫌だったわけじゃないし、「辞めるかどうかの選択」は結構難しいものでした。
私が看護師になるのを喜んでくれた両親は、今の病院を辞めたいと言ったらがっかりするでしょう。
口にこそ出しませんが、両親は私が「大きくて有名な病院に勤めている」と言うことが自慢だったはずなのです。

仕事内容が合わない。
だけど、簡単に悩む勇気も沸いていこない。
正直言って、あの時期が一番悩んだ時期だったなと思います。
自分がやりたいことに気づいたからと言って、誰もが簡単に転職を決断できる訳じゃない。
今ならそう思うことができますが、当時はすぐに「仕事をやめよう」とは思えませんでした。

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