転職のきっかけ(3)

そこから、悶々とした日が続いて・・・。
辞めたいと思ったけど、ここは自分の場所じゃないって思ったけど、「じゃあどうするの?」って問い返した時、自分では答えを見つけることができなかった。
しょうがないから、そのまま病院での仕事を続けて・・・。

そんな時、うちの科に子供をつれたママさんがやってきた。
ママさんは酷い風邪でフラフラだったけど、子供を家に一人でおいておけないからつれて来たと言った。
もう幼稚園に通いそうな子供なのに、なぜかな?と思っていたら、ママさんが言った。

「この子、障害があるんです・・・」

その言葉が、私にはやけに重かった。
一緒にいた子は男の子。
その子はニコニコしてて、ママのスカートの裾をつかんで隠れてて、とてもかわいい子だった。

「いつもは療育に連れて行ってるんですけど、今日は私の具合がよくなくて、連れていけなくて・・・」
「この子も一緒に入っていいですか、ご迷惑はかけない様にしますから」

そういって、ママさんはペコリと頭を下げた。
周りの看護師は「そういう事情ならしょうがない」と頷いて、ママさんに問診表を渡した。

なんとなく気になって、問診表を書いている最中のママさんを見てた。
男の子はママさんが注意しても走り回ってて、ソファに登ったり、跳ねたり。
ママさんは注意するんだけど、しんどそうだった。
病院内で待合室には大勢の患者さんがいるし、院内で怪我をされても困るし、先輩の計らいでそのママさんと子供は別室に入っていてもらうことになった。
大病院だけに、使っていない部屋もわりとある。

そこにママさんと子供を通した後、私は小児科からいくつか子供用のおもちゃを借りてきて、部屋に持っていった。
忙しかったけど、事が事なので先輩も許してくれた。
病院の中でこの子供が怪我をしてしまったら、申し訳ないって気持ちからだと思う。

絵本とか、人形とか、男の子がすきそうなものをいくつか選んで、病室に入ったら、男の子は凄く泣いてた。

「すいません、この子待つのが苦手で・・・パニックとかはないんですけど、長く待つのが苦手なんです、本当にすいません・・・」

迷惑だと思ったのか、ママさんは申し訳なさそうに頭を下げた。

「もう少しだからね、Aくん我慢して、ね」

ママさんは必死になだめている。

そこで、私はおもちゃのカゴを差し出した。

「●●くんて言うんだよね?ここにおもちゃがたくさんあるよ?こっちで遊んでみない?」

私は子供の相手なんかほとんどしたことない。
せいぜい、子供のころに弟の相手をしたくらいだ。
しかも、その頃は私も子供だったので、大人になってから子供に接するのは初めてだ。

だけど、この子を泣き止ませようと必死だった。
こんな状態じゃ、このママさんは診察に行くのも大変だろう。
泣き声は廊下まで響いてる。
あまりに泣かれると「他の患者さんに迷惑だ」ということになってしまうかもしれない。
カゴを差し出して、中のものをひとつずつ取り出していく・・・。

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