転職のきっかけ(2)

病院

大きい病院には、次から次へと人が来る。
その中には、他の病院から紹介状を渡されて来る人だっている。
たいしたことがない病気だと思っていたのに、検査をしてみたら思わぬ病気が見つかって、「すぐに入院!」とこっちの病院に送られてきた人だっている。

患者さんに寄り添う

私はそういう患者さんに寄り添いたかった。
なんていうのかな・・・病院は確かに病気を治す場所だけど、心を元気にする場所でもある!と思うんだよね。
確かに、前の病院だってまったくそういうことがない訳じゃない。
それに、みんな患者さんがどうでも良くてそういう対応をしてるわけじゃないんだ。
みんな優しくて、それぞれ患者さんのことを心配してて・・・だけど、一人でも多くの患者さんを診るには、それだけ多くの時間が必要だ。
一人でも多くの患者さんを診るためには、病院の考え方もしょうがないことだった。
私もその病院で働いていたから、その気持ちも解る。
気持ちが解ったから、私も頑張ろうとしたんだ。

大病院とは言え、前の病院はどんなに看護師がいたって「猫の手も借りたい」と思う様な忙しさだった。
だから「辞める」なんてこと考えられなかったし、「合わない」って思うのは私が未熟で甘いからだと思ってたし、ひたすら「今の仕事を頑張る」ってことしか考えられなかった。
だけど、「頑張れ!頑張れ!」って自分に言い聞かせながら働くのって、凄くしんどい。
同僚の看護師には相談できなかったし、もちろん先輩看護師に言うなんて考えられなかったし、一人で行き詰ってる状態が長く続いた。

独りで苦しむ状態が続く

その中で、「辞めたい・・・」って気持ちが大きくなっていった。
もちろん、その時は自分が甘えてるだけだと思ってたから、「自分が間違ってる、辞めちゃ駄目だ」って思ってた。
だけど、日に日に「自分には合わないんじゃないか、無理なんじゃないか?」って気持ちが強くなってきたんだよね。
だって、病院に来る患者さんの顔もあんまり覚えられなかった。
一度、近所のスーパーで買い物してた時、見知らぬおばさんに声かけられたんだよね。
「あなた、●●病院の看護婦さんじゃない?」って。
顔に見覚えはなかったんだけど、その通りだったから「ハイ」って言ったら、「いつもありがとうね、また来週先生のところへ行くわ」って丁寧にお辞儀をされたんだ。
あわててお辞儀を返して「ありがとうございます」って言ったけど、私はそのおばさんのこと覚えてなかった。

相手は私のこと知ってるのに、私は相手のこと知らない・・・。
それも、患者さんなのに。
なんか違う、違う、違う。
その日から真剣に考えるようになりました。
病院は正しいけど、間違ってないけど、私がやりたいことはこれじゃないんだって。

私がやりたい看護の仕事は、今の病院じゃ見つけられないんだって。

そこから、また色々考える様になりました。
看護学校に進む時すら、就職するときすら、私はあんなに悩まなかったかもしれない。
今思えば、あれがはじめて「自分と向き合った瞬間」だったんだと思う。